夏の高校野球奈良大会で、決勝進出を決めながらもコロナで主力選手を欠いた生駒と天理の練習試合が11日夕、奈良県橿原市の佐藤薬品スタジアムであった。天理の呼びかけで実現した試合は、天理が3―2で勝利。マウンド付近では、奈良大会で「封印」していた歓喜の輪ができた。そこに生駒ナインも加わり、勝利をたたえた。
天理が三回に適時打で先制したが、六回に生駒が二死から長打と内野安打で逆転。その後、天理は六回に本塁打で追いつき、内野ゴロの間に勝ち越した。
7月28日の奈良大会決勝では天理が21―0と完勝したが、生駒の選手がコロナに感染するなどして、準決勝から12人の選手変更が余儀なくされていた。
この日の練習試合の先発メンバーはいずれも3年生ばかり。天理は伝統的に夏の大会が終わっても3年生は練習に参加し続けるが、生駒は選手たちが大学受験に備えて勉強に本腰を入れ始めていた。
生駒の先発はエースの北村晄太郎。試合に先立ち、「プロ注目の戸井(零士)君は何とかして抑えたいです。たぶんプロで活躍するから、抑えたら一生自慢できるじゃないですか」と語っていた。この日は3打席対戦し、二つの内野ゴロと外野フライにおさえた。
六回、生駒の攻撃。長打を放ったのは体調不良で決勝に出られなかった矢野郎志。その裏の天理の攻撃で、内藤大翔が本塁打を放つと生駒の内野手がハイタッチして祝福し、スタンド全体も拍手でたたえた。
天理は2020年夏の県高野連独自大会3回戦で奈良朱雀(当時)と対戦した。奈良朱雀の3年生が新型コロナウイルスの濃厚接触者となって、この試合に出られなかった。それを知った天理の中村良二監督はコールド勝ちしたあとに奈良朱雀の主将を呼び止め、「うちでよかったら、みんなそろってもう一回やらんか?」と再試合を提案。10日後、天理の練習場で再試合をした。
生駒との試合を終えた中村監督は「夏の優勝校として負けは許されない試合だった。でも勝ち負けはついたけど、野球っていいなっていうゲームを(両チームが)してくれた」と話した。
生駒の熊田颯馬主将は「最後の試合は3年生全員で笑って終わろうと思っていた。それができてよかった」。
決勝の九回に「勝っても喜ばないで整列しよう」と仲間に提案した天理の戸井主将は「今日は全力勝負ができたので、勝ったときはマウンドに集まろうと思った。生駒の選手も来てくれてうれしかった」と語った。(篠原大輔、田中祐也)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル